doudoufleur

保育士どぅどぅの手作りブログ。

【もっと深読み!】『ギケイキ①』地名や人物、ファッションなど


みなさんこんにちは。どぅどぅです。

もうすぐ『ギケイキ③』も発売されるということで、町田康さんの『ギケイキ①』から読み返してみました。読解に役立つ情報をまとめてみたので、ぜひこのブログを脇に置いて『ギケイキ①』楽しんでみてください♪

ページ数は『ギケイキ①』文庫版のものだよ!

 

   

義経記』のこと

まず、オリジナルの『義経記』についてジャパンナレッジから引用してみましょう。

語り本《平家物語》と相補関係にあり,成立当時の〈判官びいき〉の風潮を背景として,義経に関して一般には知られていない部分を主にしていると言える。つまり理想化ないし美化された〈牛若丸〉と〈判官殿〉を主人公とし,副人物に忠実な家来弁慶と愛人静御前とを配したロマンの香りに満ちた物語であって,御伽草子に通じるものがある。ただし物語としての構想は緊密さを欠き,前半には破綻も見られる。これはもともと独立して存在した各種の〈語り物〉をまとめあげたためと考えられる。[・・・]義経像は,その場その場の危機を機敏な行動力と才知で切りぬける無邪気で楽天的な性格を帯びている。

義経記|国史大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典・日本古典文学全集・東洋文庫|ジャパンナレッジ(下線は筆者による)

 

義経記』はジャンルでいうと「軍記物語」です。史実に基づく史料としての価値もありつつ、フィクションが交えられたロマンたっぷりの読み物としても楽しまれていました。

そして『ギケイキ』も、リズム感抜群の語り口と同時に、史実がしっかり書かれていますね。『義経記』のあり方を丁寧に踏襲しつつ翻訳されたんだなあという感じがします。

なので筆者は、読者も『ギケイキ』は格調高い文学というよりは、読み物としてひたすら楽しむ、というスタンスで向き合うと、新たな町田康作品の楽しみ方が発生するんじゃないかなあと思いました。

 

というか、現代の視点から『ギケイキ』を語る義経自身が「これ以上語ると文学になってしまうからやめておく」という趣旨のことを言っています。「あんたがそれ言うてまうんかーい!!」と突っ込みながら読むとより楽しいですね。

登場人物

登場人物をざっくりまとめてみました。

鞍馬寺で名乗っていた「遮那王」という名は仏教用語「太陽」を表すそうです。太陽王ルイ14世みたいな高貴さとアクティブさを感じる...!

みんな個性豊かに生き生きと描かれていてほんとに楽しいですね。

義経の足あと

 

①p11 鞍馬山鞍馬寺貴船明神

②p57 滋賀県蒲生郡竜王町

③p73 岐阜県大垣市青墓町

④p73 熱田神社 

⑤p79 浮島ヶ原

⑥p110 群馬県安中市

⑦p136 二荒山神社

⑧p136 安達太良山

⑨p137 国見山

⑩p142 武隈の松

⑪p142 栗原寺

⑫p143 平泉

 

『ギケイキ』前半、平泉にたどり着くまでのルートです。現存するお寺や観光スポットは公式HPに飛べるリンクも張ったので、詳しく知りたい方はクリックしてみてみてください♪

ファッション

『ギケイキ』には粋でキラキラなファッションの描写もたくさん登場します。ちょっと引用してみましょう。

「まず白い小袖、そのうえに唐綾を重ね着て、薄い藍色の帷子を合わせる。白い、裾の大きく開いた袴を穿いて、敷妙といういい感じの、腹巻、といって胴に巻く防具を巻き、唐織のゴージャスな直垂を合わせる。(p51)」

「微妙に黄みがかった月毛の妻に、沃懸地、という蒔絵の鞍を置いて、鞍のうえには私用に、やはり鹿皮なのだけれども、白い斑点の部分が大きめの行縢が被せて合って、これまた、アホみたいに渋く、私のキャラに合っているのだった。(p53)」

 

筆者はあまり日本史に強くないので、鎌倉時代と言われるとなんとなく解像度が低く、ぼんやりしたセピア色のイメージしかできませんでした。

しかしさすが町田康さん。当時のファッションをとても具体的に描写されていて、鎌倉時代、もとい義経の像がグングンに迫ってきます。日本史オンチの筆者にも、目が覚めるような色使いがイメージできました!

 

ヒタタレ、帷子、腹巻など、詳しい武士の装束については以下のサイトが分かりやすかったので引用させていただきます。ぜひ訪問してみてくださいね。

costume.iz2.or.jp

キラキラ宝物

鎌倉時代、有力者は豪華絢爛な宝物を所持するのもステータスのひとつでした。『ギケイキ』にも蒔絵や螺鈿など、知っているようであまり知らない伝統工芸品が様々登場します。

特に平泉のギラギラ感などは、これらの伝統工芸を知っているとより肉薄して感じられます。

そこで先日筆者が発見した、めっちゃ分かりやすくい伝統工芸品の解説本を載せておきます。さりげない感じの本ですが、まさにこれが欲しかった!という感じの、痒い所に手が届く、隠れた名著です。これはほんとにオススメ!

 

 

さいごに、感想

まず。義経と弁慶のキャラクターがめちゃめちゃに魅力的でしたねーッ!

町田康さんの小説のキャラクターはいつもめちゃめちゃ面白いですが(『パンク侍』掛十之進、『どつぼ超然』余、『湖畔の愛』圧岡いづみ、etc)、その中でも義経と弁慶は特にキャラクターが立っているというか、ものすごく生き生きしています。

特に弁慶は、『告白』の熊太郎を想起させるような面白い人間。世間に失望した故に暴力に頼るというムチャクチャな奴なのに、垣間見える幼さと素直さによって、読者の心は鷲づかみにされてしまいます…。

なんとなく、こういうキャラクターは町田康さんが愛情を込めて書かれているような感じがします。邪推ですが若い頃の町田康さんと重なるところがあるのかもしれませんね。うふうふ。

個人的に『ギケイキ①』で一番こころが揺さぶられたのが、弁慶と義経が経を読むシーンです。すごい迫力かつ、官能的なことっ!読みながら筆者も弁慶のように、口から水を垂らして顎を震わせつつアウアウ言いそうになりました。

 

   

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。一緒に『ギケイキ』楽しんでいきましょう!

筆者がつくるあみぐるみは⇩から見ることができます!ぜひこっちも見て行ってくださいね♪

minne.com